試合後インタビュー
早速ですが皆さん、試合を現地もしくはDAZNで観戦した後、Jリーグ公式サイトに掲載される監督コメントって読んでいますか?
監督がどんな考えで試合に臨んだのか、起きたことに対して感じたこと、選手への期待…等、貴重な情報源となっています。
ただ上記の通り、分量が結構あります。特にミシャのコメントはボリュームたっぷり、セーコマの100円パスタくらいコスパ抜群で、これを毎回読んだり、ましてや過去のコメントを読み返すのはちょっと大変ですね。
ということで普段からコメントを読んでる人も、読んでない人もドラゲナイ人も、パパっと効率よくミシャのコメントを味わえるような方法を探っていきたいと思います。
やり方としては、数試合数十試合のコメントをまとめて読み込んで、「こんな言葉がよく出ている」みたいなことがわかればよいかと思います。
そんなことを実現させるツールなんてあるんでしょうか。。。
かがくのちからって すげー!(テキスト分析ツール)
ありました。
世の中にはおそろしく頭脳明晰な方がいらっしゃるもので、非常に高度なテキスト分析ができるフリーソフトを開発して公開されている方もいらっしゃいます。
立命館大学の樋口耕一先生が公開されてる「KH Coder」を使用すると、
・文章の中で出現するキーワードと、その回数を調べる
・キーワードどうしの結びつきを評価する
・文章の段落ごとに出現するキーワードの傾向を評価する
…など、多種多様な評価軸でテキストを吟味することができるようになるようです。
ということで、このツールを使っていきたいと思います。
フリーながら機能盛り沢山のこのツール、フル活用しようとしたら来年のアドベントカレンダーにも間に合わなさそうな気がするので、今回は最も基本的な機能である「文章の中で出現するキーワードと、その回数を調べる」を活用し
・ミシャ監督のコメントで、どのような特徴的な言い回しがあるか?
・両チーム監督のコメントで、どの選手の名前がよく挙がっているか?
→監督から見た注目度ランキング
を簡単にですが見ていきたいと思います。
集計してみた
■元ネタ
・集計元 :Jリーグ公式サイトの監督コメント
・集計対象:2020シーズンのコンサドーレのJ1リーグ戦、両監督のコメント (31試合、62本)
■手順 (詳細はチュートリアルを参照)
・元ネタの収集
それぞれの試合のページから、コメントの文章をテキストファイルへ気合でコピペします。(URLの通し番号の分析がめんどうそうなので、スクレイピングでの収集自動化は諦めた)
・KH Corderでの処理
収集したテキストを分析用フォーマットのExcelに貼り付け、強制抽出ワードの設定(*)、前処理、抽出語リストの取得を行います。
(*)…「この文字列はひとまとまりのキーワードとして扱う」という設定を明示的に行います。例えば「駒井」だと、「駒」でも意味が成り立つキーワードとして抽出できてしまうので、「駒井」を抽出しなさい、という設定を行います。
手順はこれだけです。収集作業は1時間、実際の分析処理は1分で完了です。(なけるぜ)
結果(全体的な傾向)
ということで分析結果が出ました。
両軍合わせてのコメントで、最も出現したキーワードTOP10は以下の通りとなりました。
★…選手、試合、相手、ゲーム、自分、チャンス、チーム、相手、サッカー、ボール
まあ当たり前といえばそうなんですが、ちょっとパッとしない、抽象度の高いキーワードが上位を占めています。
ということで、このリストを逆に出現数の少ないほうで見ていき、そこから目を引くキーワードにスポットを当てていきたいと思います。
分析その1.ミシャはどんな特徴的なキーワードを発している?
ということで、いくつかの特徴的なキーワードを拾ってみました。
「アグレッシブ」
いかにもミシャミシャしたこのキーワード、ミシャのコメントでは12回、相手監督のコメントでは4回の登場でした。
これまで、川崎F戦のほとんどは敗れていました。そうした過去の試合を振り返っても、今日のような良いゲームはしていました。ただチャンスがありながら得点を決められず逆に相手に点を決められるような試合がありました。ただ、自分たちができる部分が十分にあると思っていたので、前からボールを奪いに前からアグレッシブに行く。奪ったところで自分たちが支配をしていくと。そんな戦いを狙いに持ってやっていました。
ー第26節 川崎 0-2 札幌
4-0で負けた試合のあと、なかなかコメントしづらいが、ゲームの内容を見るとそれほど大差がつくゲームではなかったと思う。若い選手はアグレッシブに自由にさせない守備をしてくれて、コンビネーションもクリエイトできていた。そういう中で1失点目はワンツーの崩しからの失点、2失点目、3失点目、4失点目はわれわれの守備が安い失点を重ねてしまった。前に経験の少ない選手が多かったですけど、今日はアグレッシブな戦いを見せてくれた。狙いを持った守備、形は出せていた。ただ、やはり結果で判断されるのもサッカー。ただ非常に若い選手たち、最後まであきらめずにやってくれたし、こういった戦いを続けることが若い選手たちの成長につながると思っています。
ー第19節 神戸 4-0 札幌
「気持ち」
「あの漢」なら間違いなく再頻出であろうこのボキャブラリ、相手監督コメントでの登場は5回に対し、ミシャコメントでの登場は10回でした。相手の2倍ほど使用していたのはちょっと意外ですね。KIMOCHI Football!!
こういう試合が続いていますが、選手たちは戦いを貫いてくれました。不運な失点の中でも同点、逆転を目指して最後まで戦ってくれました。こういう状況から抜け出せない時期が続いていますが、気持ちを折ることなく続けていく。継続は力なりということを強調していきたい。
ー第13節 札幌 0-0 名古屋
今日のゲームが非常に難しくなることは分かっていた。鹿島というのは素晴らしいチームであり、大きなクラブである。そのようなチームがシーズンに入ってまだ勝てていない中で、何がなんでも勝ちにくる。そうした相手の強い気持ちを感じていました。ただし、われわれの選手は強い気持ちを持って勝利を目指して戦ってくれたと思う。
ー第3節 鹿島 0-2 札幌
「お金」「資金」
野々村社長のインタビューで分析したら7,500回は出てきそうなこのシビアな単語、相手監督のコメントでは1回も出てこなかった一方で、ミシャコメントでは1度登場してきました。そういった点でも、監督と社長のコミュニケーションがしっかりとれていそうな様子がうかがえます。知らんけど。
--FC東京や名古屋のような自陣で守りを固めるチームには、決定機を迎えてもゴールを決められない流れが続いています。何が足りないと思われますか?
簡単な解決策は3億、4億、5億円とお金をかけて点を取る選手を獲ってくること。ただ、札幌はそんな資金はないクラブで、今日は3人の大卒の選手が出ていて、今季は(中野)小次郎や(小柏)剛と大学生も出場している。選手を育てながらアグレッシブなサッカーをしていくのがわれわれのスタイル。彼らに点を取ることまで求めるのは酷。点を取るためには努力も大切だが、才能も関係している。鈴木 武蔵がチームに残っていれば、さらに今季は15~20ポイント多い結果が残せたかもしれない。サッカーはゴールを決められるか、決められないか。そうした選手がいないことを嘆いても仕方ない。
ー第33節 FC東京 1-0 札幌
「アマチュアチーム」
アウェイ広島戦、2-0のリードから立て続けに失点して結局2-2のドローとなってしまいました。そんなバタバタした試合運びの拙さを、まるで「アマチュアチーム」のようだという強めの言葉を使って厳しく表現しています。
今日のゲームは非常に洗練されたチームである広島との対戦ということで、非常に難しいゲームになると思っていました。やはり非常に難しいゲームだったんですけど、われわれのチームとしての狙いである前線からのプレッシングと、奪ってからの速い攻撃というのは比較的出せていたと思う。そういう中で1-0でリードし、後半に入って2-0でリードするまでは比較的われわれが狙いとする中で試合をコントロールできたと思うんですが、失点をしたあと、非常に短い時間で失点してしまうというアマチュアチームのような、あってはならない失点を重ねてしまった。
ー第30節 広島 2-2 札幌
アマチュアチームのようだ…ん?
あっ…(察し)ふーん
「医学」「アヤックス」「モビリティ」「哲学」
これがもろもろのキーワードの中で最も特徴的なものでした。
今シーズン、ここまでのベストバウトとも名高いホームマリノス戦でのコメントです。完璧な勝利にミシャは気を良くしたのか、試合後コメントは希少なボキャブラリのバーゲンセールとなりました。ここにミシャの、それこそ「哲学」のエッセンスが詰まっているのかもしれません。知らんけど。
--0トップのような布陣だったが。
サッカーは医学と同様に進歩していく。イメージしてほしいのは1974年のアヤックス。全員の選手がどこのポジションをやっても、問題なくプレーできる。それが私の理想であり、哲学である。これが次のトレンドになると思っているし、それを狙っている。私のパスサッカーはモビリティーのある選手が多くいるほど生きると思う。今季はそういった戦い方が増えていくと思います。今日の選手たちが見せたサッカーはメディアの方にも宿題を出したつもりです。サッカーの見方というものも変わるかもしれません。
ー第7節 札幌 3-1 横浜FM
個人的にアヤックスのエンブレムはめちゃくちゃ好きです。
分析その2.両軍の監督から注目されている選手は誰?
コメントで名前が出ていれば、その選手の注目度は高いといえるかもしれません。(その逆は必ずしも成り立ちませんが)
ということで、分析時に設定した強制抽出の結果より、どの選手が多く登場しているか?をはじき出しました。
ミシャのコメントで登場したら1pt、相手監督のコメントで登場したら2ptとし、「注目度ポイント」としてランキング形式で順に見ていきましょう。
まずは0~1ptのランキングです~
菅野、福森、ミンテ、深井、宮澤、高嶺といったメンツが0回だったのはちょっと驚きでした。ポジションが後ろ目の選手はなかなか名前が出にくい傾向にあるのかもしれません。
続いて、2位までのランキングを一気に発表~
大車輪の活躍を見せた荒野や安定のジェイが堂々のランクイン、海外に旅立った武蔵、怪我に悩んだチャナティップ、再入国で足止めを食らったアンロペも出場した試合で確実に印象を残しました。
--幅を使って攻めてくるのがうまい札幌に対して、今日の布陣の狙いは?
幅を使ってきますが、今日の先発メンバーはゼロトップと言われる布陣で、縦パスを入れてコンビネーションを使ってくる。幅を使うよりかは攻守の切り替えの部分やチャナティップや駒井(善成)といった好調の選手や荒野(拓馬)が自由に動くことで、マークを無効化する攻めをするので、彼らをどう管理するかを意識しました。前半危ないシーンはルーカス(フェルナンデス)に折り返されて1回ありましたが、それ以外はボックス内に入られることはなかった。奪ったあとの部分では、札幌が前線から切り替えてウチが前に運べないシーンが続きましたが、ゴールシーンは安部(柊斗)がタメを作って永井(謙佑)の速さを生かせた東京らしい攻撃だった。本当はもっと押し込む狙いもあったが、その中で辛抱強く戦いながら武器を生かして点を取ることができたと思います。
ー第33節 FC東京 1-0 札幌
そういえばFC東京の長谷川監督コメントでは実に4選手の名前が出てきていました。スカウティングがしっかりしていますね~(何目線だ)
ということで栄えある注目第1位選手は…(ドドドドドド)
ドウグラース、オリベイーーーーラ!!(栗谷さん風)
ということで、なんと途中加入のドドちゃんが注目度ポイント1位となりました。
後半は途中から前にブラジル人のドウグラスとロペス。得点のできる選手を起用することで試合を動かしていきたい意図がありました。交代で入った2人の選手が非常に素晴らしい活躍をしてくれました。もちろんプランどおりの交代ではあったのですが、交代した選手が点を決めるのは出来過ぎでした。
ー第26節 川崎 0-2 札幌
どちらかというと上記のような「抱き合わせ」で名前が出ることが多かった印象ですが、交代の切り札として両軍の監督に強く印象を残していたのかもしれません。めんこさは既に全国区。
ということで今回の分析はここまでになります。
KH Corderはプログラミングなしで簡単に使えるツールです。もし興味を持たれたら例えば選手コメントを分析したり、前監督のコメントなんかも拾ってみると面白い傾向が出るかもしれません。財前監督って何回「本当に」を使ってるのかとか。
さいごに(コンサドーレと全然関係ないけど)
コンサドーレに全然関係ないですが、個人的に見聞きした中で一番好きな監督コメントを置いておきます。
今シーズンは大卒三羽烏を筆頭に、新加入選手たちが素晴らしい自己紹介をしてくれました。来シーズンも新しい赤黒の勇者の生き生きとした自己紹介を期待したいものですね!
おわり