Jチームの国立開催
コロナ禍による諸々の制限がおおよそ落ち着いた2023シーズン、各チームのJリーグの国立開催が例年より多く予定されている(開催された)。
FC東京
鹿島アントラーズ
FC町田ゼルビア
清水エスパルス
名古屋グランパス
湘南ベルマーレ
ヴィッセル神戸
その他には甲府がACLを国立競技場で開催する等。(これはやむを得ない理由であるが)
注目するべきは、FC東京や湘南といった関東圏チームのみならず、名古屋や神戸、清水といった非関東チームも国立開催を打ち出している点である。これらのチームが国立開催をするメリットはどのようなものだろうか?
「国立開催」のメリット
メリット① 巨大キャパでの開催による売上の確保
キャパ54,224人のクソデカ陸上競技場で開催できれば、シンプルに大きな売上を得ることができる。
神戸が国立でホームゲームをすれば、イニエスタ観たさに来る人が大勢押しかけることが容易に想像できる。その時期にはもうイニエスタいないけど
またホームスタジアムが小規模〜中規模のチームであれば、売上の上積みもかなり期待できる。清水のホームスタジアムであるIAIスタジアムのキャパシティが20,248人らしいので、仮に客単価を4,000円とすると
(54224 – 20248)(人)×4000(円/人) = 135,904,000円。有料客をフルキャパで(←招待客や緩衝帯があるのでそんなわけないのだが、あくまで仮定として)入れることができれば、実に1試合で約1億3千5百万円の売上の上積みが期待できる。粗利益がどれくらい上がるかは知らん
メリット② 首都圏在住の地元出身者へのアプローチ
地方チームにとっては東京のど真ん中でホームゲームを開催することで、今までホーム施策のみでは中々リーチできなかった見込み顧客を獲得できるチャンスがある。顧客層の分類の仕方のひとつとして
(A) ホームタウンに住んでいて、日常的にスタジアムへ行く人
(B) ホームタウンに住んでいて、普段あまりスタジアムへ行かない人もしくは初見の人
(C) 関東をはじめとするホームタウン以外の地域に住んでいて、日常的にスタジアムへ行く人
(D) 関東をはじめとするホームタウン以外の地域に住んでいて、普段あまりスタジアムへ行かない人もしくは初見の人
に分けられると考えると、(A)がメインのリピーター層、(C)がいわゆる関東アウェイサポのイメージであるといえる。この人たちは(濃淡があるにしても)スタジアムに良く来てくれる人である。
一方で(B)(D)の層をを考えると、基本的には(B)がクラブの集客施策のターゲットになる。札幌の施策でいうと、金曜開催の京都戦に向けてポスター素材をサポーターへ配布し、(サポーターから初見の人への波及を期待して)ホームゲームの告知をする、などが挙げられる。
ホームゲームの施策でも掴みにくいのが「(D) 関東をはじめとするホームタウン以外の地域に住んでいて、普段あまりスタジアムへ行かない人もしくは初見の人」で、これが「国立開催」でのリーチを期待する層になる。
現に名古屋グランパスの国立開催特設サイトでは以下のような説明があり、「より広く届けたい」の記載から「首都圏在住の愛知県出身者をグランパスに引き込みたい」との意図が充分に解釈できる。
ホームタウンである名古屋市、豊田市、みよし市をはじめとする愛知県内各地との連携はもちろん、クラブの歴史を彩るタイトルを獲得してきた国立競技場でホームゲームを開催することで、愛知県・名古屋グランパスの魅力をより広く届けたい、そんな思いから開催が決定いたしました。
https://nagoya-grampus.jp/news/pressrelease/2023/02252023-85-28.php
メリット③ ホームスタジアムの住所に詳しくなれる
カシマスタジアムの住所は鹿嶋市神向寺後山26―2。
首都圏在住の出身者が多い地域は?
前述の「2.首都圏在住の地元出身者へのアプローチ」の観点でもう少し深掘りして考えてみる。
ホームタウンの出身者が首都圏に多く住んでいるほど効果が大きい
=国立開催をするポテンシャルが大きい、と仮定する。
厚労省管轄の国立社会保障・人口問題研究所のサイトでは人口にまつわるさまざまな調査結果が公開されており、「第8回人口移動調査報告書 (2016年社会保障・人口問題基本調査)」では、各都道府県在住者の出身地のデータがまとめられている。
上記資料のP26の表「現住地別、出生地」のデータを見てみると、1都3県在住者で特に出身者の多い地域は以下の通りとなっている。(同一都道府県を除く)
第1位 | 第2位 | 第3位 | 第4位 | 第5位 | |
埼玉県 | 東京都 (13.5%) | 千葉県 (2.3%) | 北海道 (2.0%) | 福島県 (1.6%) | 神奈川県 (1.6%) |
千葉県 | 東京都 (12.8%) | 神奈川県 (2.5%) | 北海道 (1.9%) | 新潟県 (1.8%) | 茨城県 (1.7%) |
東京都 | 神奈川県 (5.1%) | 千葉県 (2.5%) | 埼玉県 (2.4%) | 北海道 (2.0%) | 大阪府 (1.6%) |
神奈川県 | 東京都 (12.0%) | 北海道 (2.5%) | 千葉県 (1.9%) | 大阪府 (1.8%) | 静岡県 (1.6%) |
となり、1都3県全てにおいて北海道がランクインしている。
この調査の人口比率をそのまま各都県の人口に当てはめて考えると、
・東京都 :約1400万人の2.0%→28万人
・神奈川県:約920万人の2.5%→23万人
・埼玉県 :約730万人の2.0%→14.6万人
・千葉県 :約630万人の1.9%→約12万人
となり、首都圏に北海道出身者が約78万人住んでいる計算になる。国立競技場なら14回満員になる人数である。
コンサドーレの国立開催?
以上の人口データからのガバガバ考察を踏まえると、北海道コンサドーレ札幌が「国立開催」の最も大きなポテンシャルを持っているクラブの一つであると言える。
実際に国立開催をするとなると、色々考えないといけないポイント(緒経費、選手のコンディション、サッカーを見ない層へどう広報するか、コアサポが荒れないか)があるが、在京サポーターがグッと増えればグッズ収入等が大きく伸びるなど諸々のメリットも生まれることが期待される。来年から20チームに増えてホームげーむも増えることだし、ホームゲーム19試合のうち1試合で国立開催にチャレンジする価値は十分にあると考える。
ほぼ毎年代々木公園で開催される北海道フェア(supported by ★SAPPORO)では、例年30万人が来場するといわれている。この期間と国立開催をぶつければ「昼は北海道フェアで目一杯飯を食べて、そのまま国立まで歩いて夕方はコンサドーレでも見てみよう」といったプランで、北海道出身でサッカー初見の人もかなり呼び込めそうな気がする。
結論
以上